壮行会2

 壮行会の練習の為に教室にフォークギターとテープレコーダーを持ち込んだ。
 放課後、横田君とサウンドオブサイレンスを演奏する。
 いつものようにピタッと決まる。
 よし。
 次の日、内田公子を誘って3人でスカボロー・フェアを演奏した。
 彼女がメロディ。
 私は伴奏しながらハモリライン。
 横田君は2番から4番まで絡む「詠唱(キャンティクル)」のメロディ。
 ニシジマは緊張しまくりで伴奏ミスを繰り返す。
 初めはなかなか合わなかったが、テープの録音/再生を繰り返しだんだんハモれるようになって行った。
 我々3名だけの教室に彼女の声が響く。
 秋の日差しは西に傾き、教室の角を赤く照らす。
 その赤みが真っ赤になっている私の顔色を隠してくれた。

 他のメンバにはテープと楽譜を渡しただけで、本番前日に音合わせをした。
 しかし2回繰り替えすだけでなんとか形になった。

 本番当日。
 会場の体育館には全校生徒と教員が集合。(約千名)
 演奏グールプの7組中4番目。
 それまでのグループは今ひとつの出来で会場はざわついていた。
 曲目は全部で4曲。
 1曲目は「サウンドオブサイレンス」
 横田君と目線を合わせ、前奏をはじめる。
 「ハロー ダークネス マイオールド フレーン」
 でだしで一瞬頭が真っ白になるが、なんとか持ち直した。
 2番からドラムとベース、ピアノが絡み、会場から手拍子が起こる。
 演奏が終わったところで大きな拍手。
 (これはいけてる!)

 横田君がメンバー紹介をして2曲目は「59番街橋の歌」
 1フレーズはギターが先行し、ドラムとベースが追いかける。
 「スローダウン ユー ムーブトゥファース」
 アップテンポの曲だが3番の3連譜でテンポがずれ、手拍子が外れてしまった。

 曲の後、私はおもむろにマイクを握りこう言った。
 「もう一人メンバを紹介します。内田公子さん。」
 拍手の中を彼女が小走りで入ってくる。
 彼女を真中に向かって右に私、左に横田君が並び椅子に腰掛けた。
 ギターのカポタストを7フレットにセットし、ギターの前奏を開始。
 「アーユー ゴーイン トゥ スカーボローフェー」
 彼女のソプラノが体育館の屋根にこだまし、米内圭子が用意したグロッケン(鉄琴)が響く。
 会場は静まり返った。
 「テルハー トゥ メイクミー ア カーブリッショー」
 2番から私と横田君のコーラスが絡み、5番で彼女と私のデュエットになる。
 「あのグロッケンが凄くよかった」とクラスメイトの樋口君の感想。
 1曲で彼女は退場。

 椅子から立ち上がり、ギターを肩から下ろして
 「最後の曲は明日に架ける橋です。」
 と言うと、3年生の席から  「キャー」
 と女性の歓声。
 (最高のリアクションだ!)

 高橋香織のどっしりしたピアノ前奏が4フレーズ。
 そして私のソロが入る。
 「ウェンユア ウェアリー フィーリン スモー」
 客席は再び静まった。
 3番からドラムス、ベース、横田君のコーラスが入り、曲はラストに向かって盛り上がっていく。
 そして最後のサビの部分
 「ライカァー ブリーッジオーバートラーァブルウォーラー アイウィル イージュァマアー アー ーァアーアイン」
 の肝心のところで声が裏返ってしまった。
 それでも会場は大きな拍手が続いた。

 「最後のところ惜しかったなぁ」と吹奏楽部の竹内君の感想。
 ちゃんと聞いているやつにはしっかりわかるミスだった。


 その日が私の音楽人生の中で最高のステージだった。
 「なぜかS&Gの曲は知っている気がするんだよなぁ」
 と息子と娘。
 「君達が赤ん坊のころから家でとーさんが歌ってたんだよ」
 「えーっ。それってずっとニセモノを聞かされてたってこと」
 「このー!」

(C)Ken Nishijima 2004.1