プロジェクター
ホームシアターの主役はなんといっても大画面である。
ではどれくらいの大きさから大画面なのか?
36インチのブラウン管テレビ。
40〜50インチのプラズマテレビ。
テレビとしては十分大きい。
が、これらは日常のテレビなのである。
ニュースやスポーツやバラエティやCMが流れてくる、日常生活の道具である。
目指すシアターとは非日常の空間だ。
真っ暗な部屋の中で視覚は画面に支配されなければならない。
そのためにはやはり、80インチ以上のスクリーンが必要だ。
できれば100インチ以上を目指したい。
このスクリーンに映像を映す装置をプロジェクターという。
このプロジェクターには三管式と液晶、そして近頃ではDLPという方式もメジャーになってきた。
三管式とは三つのブラウン管から赤、緑、青の光を発光させ、スクリーン上で合成するしくみである。
高画質が実現できるが、でかい、重たい、高価、複雑な調整が必要という理由で主流から退きつつある。
国産メーカーのソニーは製造を中止してしまった。

三管式プロジェクター 三菱 LVP-2001
代わって台頭してきたのが、液晶とDLPだ。
液晶方式は赤、緑、青の3枚の液晶パネルの後ろからランプの光を当て、装置の内部で光を合成したあと、一つのレンズからスクリーンに投射する。
また小型の製品は一枚の液晶パネルに3色を埋め込んだものもある。
三管式に比べると、小さく、軽く、安価で複雑な調整が不要。
初期の製品は画質に問題が多かったが、最新の機種では下手な三管式を凌ぐ程画質が向上した。
しかし、光を液晶パネルの後ろから当てて投射する方式のため、黒く映したい部分にも光もれが存在し、コントラストと黒の諧調表現に限界がある。
DLP(デジタルライトプロセッシング)方式はDMDTM(デジタルマイクロミラーデバイス)という何十万個という小さな鏡を埋め込んだ素子に斜めからランプの光を当てて、反射した光をスクリーンに投射する。
小型の1チップ方式はランプと素子の間に高速回転するカラーホイールという赤、緑、青の色フィルタを通して、色を制御する。(DLPTM)
大型の3チップ方式は、赤、緑、青専用の3枚の素子を使って色を制御する。(DLP CinemaTM)
(尚、DLP方式とDMDTMは米国Texas Instruments Incorporatedの商標)
構造上、液晶の欠点を回避できるので、高コントラストの製品がこの2年位で登場してきている。
なんとあの液晶のシャープもホームシアター用上位機種として2001年にDLPを採用したのだ。
また、映写機に変わりDLP CinemaTM方式を採用したデジタル映画館がオープンするなど、これからの主流と目されている。

DLPプロジェクター ヤマハ DPX-1
2001年あたりからホームシアターというのはブームになってきてプロジェクターの新製品が続々と現れるようになった。
しかしそれまではまだまだマニアックな存在で、製品化のスピードも緩やかであった。
私の場合は2000年にプロジェクターを購入したので、ホームシアター用のDLPプロジェクターはまだ製品化されてなく、また三管式は設置に問題があったので、選択肢は液晶に限られていた。
さて、初期の液晶プロジェクター(シャープXV-101T)を1991年に購入し、その性能の低さにがっかりした私は、その後も虎視眈々と新製品のウォッチを続けていた。
液晶式は碁盤の目のような画素によって絵が作られるので、この画素数が少ないと荒い絵しか表現できない。
XV-101Tは約27万画素だった。
通常のテレビの解像度を表現するには最低でも、640×480×3(色)の約92万画素以上必要であるが、購入した当時はそんなことすら知らなかった。
1995年。
シャープの新製品XV-Z4000をアバック横浜店(当時は関内)に見に行った。
画素数は約93万。定価は398,000円。
液晶プロジェクターはどんどん進化している。
我が家のプロジェクターとは雲泥の差だ。
明るいしテレビの情報量がすべて表示されている。
欲しかったが、団地の部屋では設置条件が合わないので見送った。

液晶プロジェクター シャープ XV-Z4000
1999年2月。
三菱のLVP-L10000をアバック横浜店(横浜駅西口)で見た。
画素数は約239万。緻密である。色もコッテリしている。
これはもう液晶を超えたと思った。
しかし、定価は998,000円。
値段も液晶を超えていた。
それでもそのときの印象は忘れられず、リビングシアターにはこの機種を基準に投射距離や設置方法を考えていた。

液晶プロジェクター 三菱 LVP-L10000
そして1999年秋。ソニーから液晶プロジェクターの新製品VPL-VW10HTが出た。
雑誌の紹介記事では絶賛している。
「液晶プロジェクターの歴史を変える製品」
「遂に三管式に匹敵する液晶プロジェクターの登場」
その年の暮れ、ようやくアバック横浜店で見ることが出来た。
凄い。絵に力がある。液晶の追随性がよく、速い動画でも崩れない。
これに比べたら三菱の機種が霞んでしまった。
画素数は約314万。そして定価は648,000円。

液晶プロジェクター ソニー VPL-VW10HT
うーむ。これしかない。
結構な価格だが、三菱の機種の値段が頭にあったので、
「これはものすごくお買い得である」
と遂に決断した。
引越しが落ち着いた2000年5月にアバックに行くと、人気商品なので注文から2ヶ月かかるとのこと。
しかし、価格はかなりこなれてきて40万円代の半ばで契約できた。
そのとき三菱の機種には398,000円の値札が付いていた。
但し問題がひとつあった。
投射距離が合わない。
三菱の機種に比べて、同じ100インチでも1メートル以上投射距離が短いのである。 投射距離が短いと狭い部屋でも大画面が実現できるため、通常は喜ばれる性能であるが、私は三菱の機種を基準に家を選んでしまったのだ。
ただ、これだけ圧倒的な性能の違いを見せられたあとではもう三菱には戻れない。 投射距離は機械を運びこんでからなんとかなるさと安易に決めてしまった。
これが後に、またもや苦悩の日々を招くとは夢にも思っていない。

(C)Ken Nishijima 2003.4
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