(牧阿佐美版にもとづく)
●インドの寺院
狩りに出かける途中、寺院に立ち寄った戦士ソロルは、苦行僧のマグダヴェヤに恋人ニキヤを呼び出すよう頼む。
寺院から僧侶や舞姫たちが現れ、聖なる火をたたえる儀式が始まる。舞姫ニキヤに密かに想いをよせ、美しさに目が眩んだ大僧正は、自分のすべてを全てを捧げると言い寄るが、拒絶されてしまう。
苦行僧マグダヴェヤは、水を運んできたニキヤにソロルが待っていることをそっと伝える。
密会したふたりは、聖なる火の前で愛を誓う。その様子を物陰から盗み見た大僧正は、嫉妬の炎を燃やすのだった。
●ラジャの宮殿
ラジャ(王侯)が娘ガムザッティにソロルの肖像画を見せ、この戦士が婚約者だと告げる。ガムザッティはその勇姿に恋心をいだく。
やがて到着したソロルに、ラジャは勇敢さを讃え、ガムザッティとの婚約を言い渡す。ソロルはガムザッティの華やかな美貌に魅了される。そして仕官の身ではラジャの命に背くこともできず、ニキヤとの誓いに後ろめたさを感じながらも婚約を承諾してしまう。
婚約したふたりを祝福する踊りが披露されているところに大僧正が現れる。ソロルの出世を妬み、ふたりの婚約を破棄させようとして、ソロルとニキヤが愛し合っていることをラジャに告口するが、ラジャは激怒し、ニキヤを殺すと言い放つ。
話をこっそり聞いていたガムザッティは、ニキヤを呼び出す。やってきたニキヤの清らかな美しさに一瞬たじろぐが、ソロルは自分の婚約者なので諦めるよう告げる。引き下がらないニキヤに宝石を与えて諦めさせようと迫るが、ニキヤは受け入れず、逆にナイフで斬り掛かってしまう。侍女がナイフを取り上げ、ニキヤはその場を逃げ去るが、怒りに震えるガムザッティはニキヤへの仕返しを決意する。
●ラジャの宮殿・中庭
ガムザッティとソロルの婚約披露宴が開かれ、華やかな踊りが次々と披露される。ガムザッティとソロルも格調高く踊る。
悲嘆にくれながら踊るニキヤに、ソロルからの贈り物だと花籠が渡される。しかし、中にひそんでいた毒蛇に噛まれてしまう。毒蛇はラジャとガムザッティによってを仕込まれたものだった。
大僧正は、自分の愛を受け入れるなら解毒剤を与えようと言うが、ソロルの心変わりに絶望したニキヤは解毒剤を拒絶し、息絶える。
●ソロルの部屋
後悔にさいなまれるソロルの気を紛らわせようと、苦行僧のマグダヴェヤが水たばこを勧める。ソロルは次第に夢の世界に引き込まれていく。
●影の王国
夢の中、ソロルの前に暗闇から美しい舞姫たちの“影”が現れる。“影”たちは長い列を創り、幾重もの山を降りてくる。
ソロルは“影”のニキヤと踊り、至福の時を過ごすが、やがて見失ってしまう。
●ソロルの部屋
朦朧としているソロルの前に再びニキヤが現れ、ラジャとガムザッティによる花籠の陰謀を明かす。そして、ニキヤはソロルの手の届かない所に消えてしまう。
●寺院の前
ニキヤを求めて寺院にやってきたソロルを待っていたのは、結婚式のためにやってきたラジャとガムザッティ、そして式を取り仕切る大僧正だった。
目の前をよぎるニキヤの幻影は、ソロルにしか見えない。
大僧正に促され、ガムザッティの手を取り、寺院の門をくぐろうとした瞬間、神の怒りにより寺院は崩壊する。
ソロルは、薄れゆく意識の彼方にニキヤの姿を見る。ニキヤに招かれながらも、ソロルは遂に息絶えてしまうのだった。
参考文献:新国立劇場バレエ団公演プログラム(2000年)/「バレエ101物語」(新書館)