「ジゼル」ものがたり

 ●第1幕
中世ドイツの農村。未亡人ベルタの娘ジゼルは、農夫のロイスに恋してる。しかし実は伯爵アルベルトが、村娘ジゼルに会うため農夫に変装しているのだ。

今日も納屋で服を着替え、ジゼルの家を訪れるロイス。飛び出して来たジゼルは、たわいない花占いに一喜一憂し、楽しそうに踊る。やがて、ぶどうの収穫から戻った友人たちも加わり、踊りの輪が広がる。
そこへ母親のベルタが現れ、心臓の弱い娘を心配して家に連れ帰る。

森番のハンスもジゼルを愛しているが、ロイスに夢中のジゼルは、ハンスは眼中にない。ロイスを不審に思うハンスは、こっそり納屋に忍び込み、貴族のしるしである剣を見つける。

狩りの角笛が近づき、クールランド公爵とバチルド姫の一行が現れ、ジゼル母子は飲み物でもてなす。バチルドの美しい衣裳に見惚れるジゼルを微笑ましく思ったバチルドは、婚約者がいるというジゼルに首飾りを与える。

村人たちのぶどうの収穫祭が始まる。ジゼルも母の許しを得て、祭りの踊りに加わる。隠れていたロイスも加わり、祭りが最高潮に達した時、突然ハンスが、ロイスは実は伯爵アルベルトだと暴露する。信じないジゼルに証拠の剣を見せ、角笛を吹き鳴らす。
角笛の音で現れた公爵一行は、農夫姿のアルベルトを見て驚く。混乱するジゼルに追い討ちをかけるように、バチルドは、アルベルトは自分の婚約者だと指輪を見せる。
裏切られたショックで正気を失ったジゼルは、錯乱し、ついに息絶える。


 
 ●第2幕
 
森の奥深く、沼のほとりのジゼルの墓。
結婚前に命を落した乙女たちはウィリとなり、夜になると姿を現し踊り出す。

ウィリの女王ミルタが現れ、ウィリたちを呼び集める。ミルタは新しい仲間が加わることを告げ、ジゼルを墓から導き出す。
人の気配を感じてウィリたちが姿を隠すと、後悔に落ち込んだアルベルトがやってくる。ジゼルの墓に花を手向けるアルベルトは、ジゼルの気配を感じる。やがてジゼルの存在は確かなものになる。

道に迷い、ウィリたちに捕まったハンスは、さんざん踊らされたあげく、沼に突き落とされてしまう。ウィリたちは、次にアルベルトも餌食にしようとする。ジゼルは、アルベルトを守ろうとミルタに懇願するが、冷たく拒絶される。ミルタはふたりに踊り続けるように命じる。アルベルトの疲労が限界に達し、これまでかと思った時、夜明けを告げる教会の鐘が鳴り響く。
白々と夜が明け始め、ウィリたちは力が衰え、姿を消していく。ジゼルも、愛する人を守りとおせたことに安堵しつつも、アルベルトとの永遠の別れを惜しみながら、墓の中に消えていく。
朝靄の中、ひとり残されたアルベルトは、悲しみにくれるのだった。

参考文献:新国立劇場「ジゼル」('98)公演パンフレット、「バレエ101物語」新書館