●続々と登場する国鉄標準型


 1960年代にはいると、軽量車体、新性能電車のような技術革新は一段落し、こういった技術の安定化に伴って標準化、大量生産の時代へと移行していきます。
 小規模な改良は行われましたが、どれも似たようなスタイルで規格化された部品が使用されており、ダイヤ改正の際に車両の広域配転が可能になりました。
 これは当時はまだ新幹線が西へ、北へと建設が進められていた時代で、新幹線の延長〜幹線優等列車の廃止〜他の線への転用…という段階まで見越して車両を増強しており、出来るだけ全国どこでも使える設計にし、配置転換を容易にしようと考えていたためです。
 通勤型電車なども同じ系列の電車が長年にわたって大量生産されますが、新車はまず都市部の主要路線へ、新性能車でも車齢の古いものは他の路線へ…という「玉突き配転」が行われたため、多くの地域に103系などが広がって標準化が行き渡ることになりました。
 近郊型電車の活躍エリア拡大はめざましいというより、すさまじいものがありました。
 電化の延伸と客車列車の電車化が進んだため、当初東京から100〜200km圏内で活躍を始めたのが、10年そこそこの間に常磐線のほぼ全域、関東甲信越の主要路線のほとんど、東海道、山陽、北九州エリアまで広がるのです。
 路線によって投入される系列は異なりますが基本的な仕様は皆同じで、やはり標準化、規格化が推進されています。
 このように、私たちが今「国鉄型」としてみることの出来る車種の殆どはこの年代に設計され、長期に渡って大量生産されて広いエリアで活躍しています。
 どういうものがあるかもう少し具体的にみてみると…。
 お馴染みの形式がたくさんあることと思います。

電車

103系、113系、115系、165系、485系など…

 このうち103系は3000両を超える大所帯になり、国鉄最大の両数を誇る電車となりました。
 また、交直両用の近郊型と急行型は交流の周波数等々で細かく形式が別れていますが、基本的なスタイルは用途ごとに統一されています。
 特急用の485系は国鉄型特急電車の決定版といえるもので、特急大増発の国鉄の施策にのって続々と製造され、特急時代の旗手として活躍していきます。


  特急電車の代表485系電車。この電車のバリエーションはきわめて多彩です。


  クハ153型500番代に始まったこのスタイルは急行型、近郊型の標準的な「顔」となりました。
  塗り分けがなくなってしまうと、何型だかわからなくなってしまうほどです。


気動車

 キハ58系、82系、20系など…

 先にも述べましたが、特急用から通勤用まで同系列のエンジンを使用しています。ちなみに電車でもモーターは各車種ほぼ同じで、速度によってギヤ比が分けられているだけです。


  ディーゼルカーのバリエーションも急速に増えました。
  中央のキハ58系は特に大量生産され、本当に日本の津々浦々で活躍したグループです。


機関車

 EF65、ED75、DD51、DE10など…

 機関車は同一形式でも地域や用途によって仕様が異なるもの用意し、基本的な部分は共通…という形で増強されていきます。
 特にディーゼル機関車のDD51やDE10は蒸気機関車の置き換え用として大量生産され、全国津々浦々で活躍しました。


 色や形は異なりますが、形式は全てEF65型電気機関車です。

 それからこの時期特徴的だったのは、固定編成の20系以外客車の新造が行われていないことです。オハネ17、オシ16等の新形式は出ていますがいずれも改造によるもので、新造ではありません。
 これは当時「今後は電車と気動車中心に…」という方向で車両が増強されていたためです。これにより客車列車の電車化、気動車化は進みますが、客車で残っていた地方の通勤列車や20系を使っていない夜行列車の改善は後回しの形になってしまいました。
 しかし1970年代に入って12系が量産化されると、客車も新しい時代を迎えることとなります。

 続く 戻る