生徒会

 「君たちはエリートである。」
 高校の入学式での校長の発言にぐっとしらけた。
 (エリートってどういう意味だ???)
 高校生の段階でエリートっていうのは灘高とかラサールとか慶応付属とかで、自分は学区内トップの高校を受験すらできなかったのに、この校長は何を言ってるんだと思った。
 まあ、入学できてうれしいな。ドキドキ、ワクワク・・・ではなくて、すこし斜に構えた生意気な新入生だったのだ。

 1年の担任は体育教師でハンドボール部の顧問だった。
 体育の授業は体力測定から始まった。
 驚いたことにニシジマ少年はクラスメートに比べ成績がよいのだ。
 それまで運動能力ではちっとも目立たなかったので意外だった。
 特にソフトボール投げでは60メートルも投げてしまい、現役野球部員に次ぐ高記録を出してしまった。
 そこに目をつけたのが担任である。
 ハンドボール部への執拗な勧誘を受けた。
 中1のとき野球部で失敗したので運動部に入る気は無かったが、新入生としては担任の勧誘を簡単には断れない。
 「仮入部なら。」
 と無理やり引き込まれた。

 そもそもハンドボールのルールも知らないまま、朝と放課後の練習に出ることになった。
 一度入ってしまうと仮入部など関係ない。
 自転車で30分10Km走って通学し、朝連に参加。
 放課後暗くなるまで練習。
 それから自転車で30分10Km走って帰宅。
 家に着いて晩飯を食べると疲れてすぐ寝てしまう。
 きついばっかりで、少しも面白くない。
 いかんこのままだと中1の繰り返しだ。
 しかし、担任にもう疲れたので止めたいなんてセリフは言えない。
 なにか手を打たねば。

 6月に生徒会の役員選挙があった。
 生徒会長1名、副会長2名、庶務2名を選抜する。
 (これだ。役員に立候補すれば運動部を止められる。)
 「中学の時に生徒総会の議長をしたこともあり、生徒会でがんばりたい。」
 と言ってきた生徒に担任は反対できる道理が無かった。

 副会長に立候補して挑んだ立会い演説会。
 全校生徒が体育館に集められた。
 場内は雑然としていた。
 私語が飛び交い、演説を聞こうという雰囲気が全く無い。
 特に3年生がひどかった。
 中学の時の生徒総会はこの倍以上の人数だったが、皆きちんと会に参加していた。
 この意識の低さはどういうことだ。
 こっちはクラスメートに応援演説を頼み、一週間以上かけて演説の準備をしてきたのに。
 そして自分の番に来たとき、つい言っちゃったのだ。
 「3年生、静かにして下さい」
 一瞬険悪な空気が流れたが、すぐにもとの私語の嵐。
 演説を続けるが殆どだれも聞いちゃいない。
 (なんだあの生意気な1年は)という悪いイメージしか残せなかった。
 当然のように得票数はきっちり最下位で落選した。

 はっきりいって、この高校に失望したのはこのときである。
 しかし、補欠選挙で庶務に立候補して承認された。
 なにしろ運動部を止める口実を作らなければならないからだ。

 そして、運動部でがんばるのでなく、熱心に生徒会活動に打ち込むのでなく、ましてや勉学に励むのでもない、だめだめ高校生活にずるずると足を突っ込んでいった。


(C)Ken Nishijima 2003.6